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20171/30

ヒールフックの重要性と使いどころ(前編) 上手にムーブに組み込んで力を節約しよう!

 日本におけるボルダリングのグレーディングは現在10級から5段+まで存在しますが、割と初期の段階から重要となるテクニック「ヒールフック」。ジムによって多少グレーディングに誤差があるものの5級程度、もしくは足限定課題が出現するグレードからは頻繁に出現するようになります。最初は体を壁から離さないように補助的に使いますが、徐々に積極的に体を上げるために使うようになってきたり、悪いホールドを保持するために体の重心移動をする場合にも用いられます。ルーフ課題においてはヒールフック・トゥフックは必須テクニックで、うまくできているかどうかで手に対する負担がかなり違ってきます。今回はヒールフックの使いどころを数回に分けて勉強したいと思います。

 

ヒールフックからのムーブバリエーション

 ヒールフックからの連鎖的な動きのバリエーションは多岐にわたり、入門書などを見る限りではそれらのバリエーションに詳しく触れられているものはあまりありません。上級者から言わせると無意識にヒールフックを用いることができ、シチュエーションによって自然とムーブを繰り出すことができるそうです。でも、筆者のような初心者にとっては「ヒールかけて・・・でどうするの?」ってなっちゃいます。ヒールフック自体は全く難しいテクニックでは無く、ただ踵をホールドにかけるだけなのですが、そこからどのようなムーブに繋げるかで極端に難易度が変わってきます。ザックリ大まかに下記のようなバリエーションが存在するので、基本的なバリエーションは頭に入れておきましょう。今回は基本的なヒールフックに重点を置いてまずはヒールフックをムーブの中に取り入れてみて慣れることが大切です。

  • 基本ヒールフック
  • ヒールフックからの乗り込み
  • ヒールフックで重心移動
  • マントリング

 

基本ヒールフック

 基本的にヒールフックはダイアゴナルやフラッギングなどと理屈は同じで、体が壁から離れようとする力を足の力でカバーするために行います。例えばフラッギングは右手・右足/左手・左足で保持し、次のムーブに繋げなければならない場合に用いられ、主に体の回転を抑制するという重要な役割を持っていますよね。基本的なヒールフックはそれと同じで、体が壁から剥がれないようにするため用いられます。ムーブの中で瞬間的に右手右足など、体の半身で保持している事って意外に多いのです。分からないうちはデッドポイント気味にとればいけることも多いので力任せなムーブになりがちですが、ヒールフックの基本を習得することでスタティックに取れるようになります。

 それでは動画を見て確認しましょう。ヒールフックが三か所出てきますがどれも「体が剥がれないようにするため」のヒールフックです。3回中2回が「手に足」ヒールフックになっており、基本的には「手に足」になる場面が多くなります。課題の中に結構大きめのホールドが出てくる場合はオブザベーションの段階でヒールフックの可能性を探りましょう。また、ヒールフックを使って次のホールドを捉えたらトゥに素早く切り替えましょう。


 

ヒールフック+乗り込み

 次はヒールフックを。体の位置が低ければ低いほどヒールフックをしている足に負担がかかります。積極的に体を上げていくタイプのヒールフックですね。この場合、ヒールフックからの乗り込みの時に「ガニ股」になることがコツと言われています。ヒールフックをホールドに掛けた場合まずは垂直に掛けますよね。しかし、その状態でかき込むように力を加えると当然ですが靴が脱げかけてしまいますし、適切に力を加えていないので体が上がりません。人によっては「鍵穴をロックするように」とか「つま先を外側に寝かせる」と表現しますがとにかく「ガニ股」になってから力を加えないと体は上がりません。また、ルーフ形状の壁などでルーフから出て上方向に向かう場合、この「ガニ股」姿勢にならなければそもそも体をロックすることすらできないので、必ず必要な動作になってきます。

 動画がそれに近い動作をしているので紹介します。スタートから4つ目のホールドにヒールフックした際、体はほぼルーフのような姿勢になっているので、「ガニ股」でかき込むような力を加えない限り、体を保持することすらできません。完全に乗り込んではいないものの、腰の位置を一定に保つためにはかなりの力が必要です。参考動画はM氏によるウォームアップ課題(汗)。上級者が登っている姿を見ると何が難しいか理解に苦しみますね。筆者がこのムーブをすると股関節が悲鳴をあげます。。。


 

ヒールフックの使いどころ

 以上の2つの動画を見て1つ目の動画の場合、実はヒールフックを使わなくてもダイアゴナル+デッドポイントでいけなくはありません。そのかわり、足の乗せ換えを頻繁に行わなければならなかったりダイアゴナルでは若干遠すぎたりするのでかなり難しく感じてしまいますが、ヒールフックを多用することがグレードが2つ分くらい低く感じます。手数省略ムーブとしてはアウトサイドフラッギングやインサイドフラッギングと通じるところがあります。

 2つ目の動画の場合は上に向かうための足場がそもそも存在しないので、ヒールフックを使って高い足場を的確にとらえる必要があります。ヒールフックを使わなければ、上方向に体を上げるためにはキャンパーしかなく、仮に捉えたとしてもスローパーなので保持することは困難でしょう。つまりヒールフックが必要不可欠な課題といえます。高い足場を捉えるためのムーブに「ハイステップ」というそのままトゥをホールドに乗せて乗り込んでいくムーブがありますが、ハイステップでは上げる側の足と逆側の足のフットホールドがあることが前提なので、今回のように下に足がない場合はヒールフックを選択するしかありません。

 

ヒールフックの利点

 何といってもヒールフックの利点は手数をかなり省略することができます。もっと細かく言うと左手・左足/右手・右足のように体の半身で保持する場合、体が回転してしまいますよね。通常であればそのようなならないように足を乗せ換えてダイアゴナルに持っていくか、アウトサイドフラッギングを使って多少きつくても足の乗せ換えを省略するかになります。ここでヒールフックがかかるような若干大きめのホールドがある場合は前者2つのムーブのつらさを1手で、しかも楽にクリアすることができるのです。

 そして最大の利点はヒールフックをそのまま推進力としても活用できるのでフックをかけた足をかき込むように上方向でも横方向でも自在に推進力をコントロールすることができます。しっかりとかかっていれば、脚力の限界まで力を出力することができます。普段使わない筋肉をフル活用するので、股関節がかなり痛くなりますが…(笑)

 

ヒールフックの欠点

 ヒールフックは踵でホールドを捉えるため、うまくかかれば比較的大きな力をかけることができ、壁から剥がれるのを抑制するだけではなく大きな推進力を得ることができます。反面、ヒールフックを解除するときの反動も大きくなります。傾斜がきつくなればなるほどその反動は大きくなり、ルーフ課題などではかなり顕著になります。トゥフックと比較するとヒールフックは解除するのに一度大きく上方向に力を加える必要があります。すると解除するときに急激に大きな重心移動が起こり、結果として大きく体が振られることになってしまいます。その点を考慮に入れると、力を抜くだけで解除できるトゥフックとうまく使い分ける必要が出てきます。トゥフックの場合、体が剥がれるのを抑制する効果しかなく、推進力は「ゼロ」になってしまいます。しかし、力を徐々に抜いていくだけで穏やかに解除できるので、振られ対策には有効です。

 

まとめ

 今回はヒールフックの基本について触れてみましたが、いかがでしたか?上級者の方にとってはヒールフックは常用テクニックなのであたりまえかもしれませんが、ボルダリングを初めて1年程度の筆者にとってニガテムーブの一つに堂々ランクインしている奥が深いテクニックです。次にどのようなムーブに繋げるかで印象がガラっと変わってしまいますね。まずは日々のボルダリングに少しずつ取り入れて慣れるしかないようです。特に乗り込み系のヒールフックは体幹・脚力ともに必要になってくるのですぐにスムーズにできるものではありません。筆者も常日頃からヒールフックトレーニングをして普段使っていない筋肉にムチを入れてます(笑)

 

後篇はコチラ:3級の壁突破の秘訣! ~フットワークをマスターしよう~

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