ボルダリング上級者への道

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ボルダリングにおけるリーチ問題克服のススメ (第1回:リーチの重要性)

 クライミングにおいてリーチは大変重要な要素の一つです。後5cmリーチが長ければ目標とするホールドをキャッチできるのに・・・。こう思うことはクライミングでは日常茶飯事。ショートリーチクライマーにとってその頻度たるや鬱病になってもおかしくないくらい切実な問題です。今回はそんな悩ましいワードであるリーチに焦点を当てて詳細に分析してみたいと思います。

 

クライミングにおけるリーチとは

 大前提としてクライミングにおけるリーチとは両腕を左右に広げた状態の指先から指先までの距離です。物理的な指先から指先までの長さの事を指すのがリーチであり、特定のムーブによって手が届く範囲ではありません。そして、訓練やストレッチ等で極端に伸びるものでもありません。ネット上では「リーチは伸びる」という情報もありますが、物理的に伸ばすのではなく、ムーブを工夫して届く範囲を増やすという解釈が正しいと思います。中には外部的要因でリーチが伸びるという人もいますが、外部的要因でリーチが伸びることは無いと科学的に証明されているそうです。ですが首長族の例をとってみれば、首に巻く輪っかの枚数を徐々に増やしていくことで首を長くすることに成功しています。なので腕の骨格を無理やり伸ばすために同じような手法をとれば物理的に伸びることもあるかもしれません。しかし、首長族は何十年という月日を経ての「結果」であり、クライマーにとってのリーチを増大するには現実的ではありません。

 クライミングにおける重要な要素はトレーニングで改善しやすい順に並べると①ムーブ、②フィジカル、③柔軟性、④リーチであり、ダントツで最下位に来るのがリーチ。ほぼ改善不可能な問題です。しかしながらリーチが短いことはどうにもならないので、①ムーブ、②フィジカル、③柔軟性の3つの特性をトレーニングによって改善し、より遠くのホールドを掴み取るための射程距離を長くすることが重要です。物理的に届かないホールドはランジやダブルダイノで解決するしかないのですが、クライミングにおいてリーチ不足でキャッチできないホールドのほとんどが物理的に届かないのではなく「ホールドをキャッチできる体勢になれない」ことが原因であることが多く、改善できる要素の①ムーブ、②フィジカル、③柔軟性でカバーできることがほとんどです。とは言ってもロングリーチの方とショートリーチの方を比較するとどうしてもショートリーチの方は色々と工夫しなければならないのは変わりません。

 

日本人の平均的リーチと有利な体型

 日本人の平均身長男性171.6cm、女性158.5cm(調査年:2005年 成人20~49歳、出典:平均身長の国際比較)となっています。リーチはほぼ身長と同じといわれていますが、東洋人は一般的に+5cmくらいだそうです。ということで平均的なリーチ男性175.6cm、女性163.5cmとなります。概ね日本人の著名なクライマーはこのあたりの体型が多く、平均的な体格で世界と戦っているということになります。故に背が高くリーチがあればある程有利というわけでもなさそうです。

 また、クライミングに当てはめると身長よりもリーチが長いオラウータン型が当然のことながら有利に働きます。逆に不利なのが身長よりもリーチが短いペンギン体型ですね。ペンギン型に当てはまり、身長の低い人はクライミングにおいては相当不利なので前項で取り上げたムーブ+フィジカル+柔軟性を平均的な身長のクライマーに比べるとかなり努力が必要です。筆者は身長165cm、リーチは162cm。若干ペンギン型に分類されてしまいますね(汗)。リーチを計測した際は若干ショックでした。。。

 

 

超重要!リーチ克服におけるメンタル改善!

Poky / Pixabay

 リーチ問題を克服するにあたって、意外に一番重要なのはメンタル強化にあると筆者は考えています。ショートリーチクライマーはロングリーチクライマーが苦もなく届くホールドをあの手この手でひと手間ふた手間かけてキャッチします。そもそもリーチ的に届かない、物理的に届かないホールドは飛びつくしかありません。つまりランジかダブルダイノでダイナミックにキャッチすることになり、パワーロスも数倍になってしまいます。そうやって苦労して完登した課題もロングリーチクライマーはあっさり完登してしまいます。そういう瞬間を目の当たりにした場合、間違いなくテンションだだ下がりですよね。ロングリーチクライマーが楽そうにやっているムーブが全くできない。何度やっても同じトコロでフォールする自分に嫌気がさしてしまいます。何でできないかも考える気力すら削がれてしまいます。

 しかし!そんなところで悔しい気持ちに苛まれてはいけません。思い切って心の中で言い訳しましょう!「リーチが足りないからしょうがない」と。ここが重要です。「リーチが足りない」ことを自分で認めてあげるのです。生真面目な日本人クライマーは言い訳をしたくないので「あの人ができるんだから、俺にもできるはず!出来なかったらパワーやテクニックが足りないだけだ!」と思い込む傾向にあるようです。実際に筆者がそうでした。足りないものを「リーチ」以外の何かに錯誤してしまうのです。そうなってしまったら、やっても意味の無いようなトレーニングに走り、付けなくてよい無駄な筋肉をつけてしまい、体重が増加し、さらに登れなくなるという悪循環を作ってしまいます。重要なのは「リーチ」がない自分を認め、リーチの無さを補うための①ムーブ、②フィジカル、③柔軟性を改善するトレーニングを行おうとする気持ちです。

 他の人にできて自分にできない。その時に自分がリーチがないのを自覚していれば別の方法に柔軟に切り替えることができるようになります。ロングリーチクライマーの真似をすることは物理的に不可能なことにトライしているようなものです。つまり何度やってもできないのが当たり前のことを「できるはず!」と思いこんで何度も何度も同じことを繰り返しアタックする。そんなことでヨレてストレスフルなクライミングをするより、自分の体型に合ったムーブを考え出すほうが効率が良いと思いませんか?結局、どんなヘンテコリン・いっぱいいっぱいムーブを繰り出そうが、その課題を完登することが目的のはずです。「リーチを言い訳にしない!」ではなく「リーチが無いのをカバーできる発想力・それを具現化するテクニックがない」に置き換えましょう。そうすることで、前向きにできない課題を楽しみながら攻略することができるのです。

 そうやって自分なりのムーブを考えたりすることで確実に引き出しは多くなっていきます。考えまくって前向きに課題と向き合うことが強さに繋がっていくのだと筆者は思っています。リーチが10cm違えば同じ課題でも体感グレードが確実に変わります。それを踏まえてとにかく前向きにいろいろな角度から自分の限界に挑戦しましょう。

 

リーチ問題を克服しよう!

 さてここまではショートリーチクライマーにとってはネガティブなお話だったのですが、ここからが本題です。リーチ問題を克服するという目標を達成する時に守ったほうが良い基本的な考え方があると筆者は考えています。一般的に問題を解決しようとした場合、ビジネスシーンでは良く聞くPDCAのサイクルを基準として改善のスパイラルを醸成し、より良い結果に向けて動いていきます。

HypnoArt / Pixabay

PDCAとは

PLAN(計画)→ DO(行動)→ CHECK(検証/評価)→ ACTION(改善)

の頭文字をとった略語です。

 言葉で表現すると難しいですが、クライマーは日々のクライミングで自然とこのサイクルを実践しています。

 オブザベーション(PLAN)→トライ(DO)→失敗!何故できなかったか考える→ムーブが違っていることに気づく(CHECK)→次は違うムーブでやろう!(ACTION)→もう一度違うムーブでオブザベーション(PLAN)→トライ(DO)→失敗・・・という具合です。

 これはクライミング中の話であって、短期的なPDCAサイクルを繰り返しながらクライミングは成り立っているのです。しかし、どうしても自分にとって何度やっても不可能なものを可能にしようとした場合、長期的なPDCAが必要になってきます。今回の表題でもある「リーチ問題を克服したい!」という難関かつ目標達成まで時間を要すような事案の場合、さらに詳細な項目を複数同時進行でこなさなければなりません。そして、そもそもの原因を違う角度でとらえてしまった場合、長期的に取り組む割に改善の度合いが自分が欲するよりも低い水準で推移してしまいます。確実に原因を捉えるのは非常に困難なので、いろいろな原因を複数個考え同時進行しなければ問題解決までのタイムロスが多くなってしまいます。

 

 

まとめ

 ショートリーチクライマーにとってはまさに耳が痛い内容でしたね。筆者も自分自身で少し嫌になってきました(笑)。さて次回は具体的なPDCAのサイクルの立て方を紹介し、ショートリーチクライマーの具体的な問題解決案を紹介します。

 

 

 

 

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