三級の壁はフットワークの克服にあり!
クライミングジム「Activ-A(アクティバ)」に行く機会があり、初めて触る課題にトライする中、ジムオーナーから言われた一言。
「三級程度の課題になってくると持ちにくい・保持するのがやっとというホールドを使って完登を目指すような課題が多くなってきます。そういった「悪いホールド」を保持できずにフォールしてしまう時、「自分の力が無い、保持力が不足している」と思う人が限りなく多いです。そうやって握力トレーニングをしてみたり、力の増強に走ってしまう方が多いのですが、決してそうではないのです。保持しにくいホールドを保持する時、力いっぱい保持するのではなく、保持しやすい体勢を考えてほしいのです。ポイントとなってくるのは足遣いと重心の位置を的確に把握すること。例えばヒールフックしてかき込んで重心の位置をずらして、ホールドを保持しやすい体の位置を探したりすることは典型ですね。」
クライミングジム「Activ-A(アクティバ)」オーナー内藤氏より
自分のフットワークのへたくそ具合は自他ともに認め、なんとか改善したかったものの、何がヘタクソかイマイチわからないままとにかく丁寧にを心がけるだけだったのですが、理屈が分かってなかったので手足のホールドが悪くなってくるとただバタつくだけでした。しかしこの指導のおかげで自分の何が悪かったのか明確に知ることができました。つまり「クライミングでのフットワーク」=「手で保持するホールドの効く位置まで体の重心をフットワークでコントロールする」ということです。
重心移動に必要なフットワークとは
フットワークを鍛えるといっても、非常に多岐にわたってしまうのでここでは一例を紹介します。3級で求められるフットワークはヒールフック一つにとっても理論を知っていないと求められる動作ができないことが多くなってきます。4,5級程度まではただ単に体が剥がれないようにヒールフックで安定させるとかヒールフックからの乗り込みなど、とにかく上方向に力をかけることが多いですよね。考えなくても単純に体を上げる為や、体を上げる為の補助的な意味合いで使用することが多いテクニックです。しかし3級程度の課題をこなすためのヒールフックはプラスアルファの役割が追加されます。単純に体を上げる為にだけではなく、悪いホールドを保持するために少しでも保持しやすい位置に体の重心を移動させるために使われることが多いです。
それでは一例を見てみましょう。下の写真は甲府のとある山にある岩です。トラバースの一部に重心移動のため、ヒールフックでかき込む動作があったのでご紹介します。まずはこの写真でムーブを想像してください。
※矢印はそれぞれのホールドの効く方向です。
- アンダースタートで左手で①サイドポケットをとる
- ダイアゴナルで右手で②サイドカチをとる
- クロスムーブで左手で③ガバをとり、マッチする
文にして写真を見るだけでは簡単そうですね。それでは実際のムーブを見ていきましょう。
写真は②サイドカチを取った後、足を送ってヒールフックを掛けたところです。この後左手を③ガバに送らなければならないのですが、この写真で言うとちょうど股間のあたりですので、この態勢で左手を送っても全くかかりません。右手もカチなので無理なムーブや少しでもダイナミックなムーブではフォールしてしまいます。とりあえず左手を③ガバに送るものの、この時点では右手を離すことはできません。
そこでヒールフックを少し右にずらして、さらにかき込む方向に力をかけて、腰をできるだけ右側に重心移動させます。そうすることによって、左手が効く位置まで体を落とすことができるので、右手を離すことができ、③ガバにマッチすることができます。写真は右手を離した瞬間ですね。左手とヒールフックが効いているのでかなりスタティックに右手を送ることができます。
まとめ
このように足を使った重心移動はある意味三級の壁と言えるでしょう。その理由は「理屈が分かってないと繰り出せないムーブ」だからです。五級まである程度こなせる実力があるのであれば、フットワークのほとんどの基礎的なテクニックは身に付いているはずなので、三級位からはそれの応用ができるだけの理論も必要になってくるということですね。「対となる力」については後日解説しますが、かなり重要な理論だと思いますので、三級以上の課題に壁を感じている方は「対となる力」をどう発生させるかの実践と理論は勉強して損はないと思います。逆に言うと一級~三級課題を自然にできている方はそれを体得しているということでしょうね。この他にもトゥでかき込んで重心移動したり、スメアリングの上手な張り方など、フットワークは非常に多岐にわたるのでそれは別記事で個別に解説していきたいと思います。
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